MAMIYA CULTURE LOG


漫画『シグルイ』感想

1,512文字
ジャンル時代劇
原作・原案南條範夫
作画山口貴由
掲載誌チャンピオンRED
発表号2003年8月号 – 2010年9月号
巻数全15巻
話数全84話

封建社会の完成形は、少数のサディストと多数のマゾヒストによって構成されるのだ

寛永六年、駿府城内。ご法度とされる真剣御前試合が、駿府藩主の暴君徳川忠長によって挙行された。その第一試合に現れたのは隻腕の剣士と盲目跛足の剣士。全ては七年前に遡る恐るべき因縁から始まった…。

二人の剣鬼の対決を軸に様々な人間たちの思惑と因果、そして狂気と愛憎が絡み合いながら物語は進む。

シグルイ (しぐるい)とは【ピクシブ百科事典】 – pixiv

南條範夫の時代小説『駿河城御前試合』の第一話「無明逆流れ」を中心に展開されているが、山口貴由による奔放な脚色がなされており、ほとんど別物に近い作品となっている。
単行本あらすじでは本作品を「惨酷無惨時代劇」と紹介している。劇画調のリアルな絵柄で、身体欠損や臓物がこぼれ落ちる過激な描写が多い。
連載開始当初、第一試合以外も描くと宣言していたが、第一試合決着で完結となった。この分はシグルイの『無明逆流れ編』とされている。

シグルイ Wikipedia

全話無料(最終巻除く)キャンペーンを機に『シグルイ』1話〜77話まで一気読み。その後、Kindleにて最終15巻まで読了。

圧倒的画力。耽美な男の筋肉が美しすぎる。「老いた男」「傷だらけの男」にすら異様な色気がある。筋肉も血管も内臓も、生き物としての肉体描写が異様に艶めいているのに、次のページでは臓物が粗末に飛び交う。生き残るための醜さまで描く作品。まさに死狂い。美と醜悪さが地続きすぎる。

武家社会の理不尽、狂気、執念、湿度高めの情念……セクシャルとバイオレンスが隣り合わせで存在していて、読むのにかなりカロリーを消費した。

個人的に好きなキャラは牛股アニキ。ネットミームでよく見る人。

藤木と伊良子の関係性には、『ベルセルク』のガッツとグリフィスみたいな拗れ方を感じてずっとしんどかった。単なる「ライバル」ではなく、互いの人生を決定的に変えてしまう男同士。出会ったことで破滅へ向かう宿命。お互いにもっと対話を重ねておけば、和解して一緒に上を目指すエンドもあったのでは……という、もどかしさもある。

あと、両作ともホモソーシャルの地獄。女性キャラも重要なんだけど、物語の核は結局「男と男の呪い」なんですよね。『シグルイ』は武家社会、『ベルセルク』は傭兵団という極端な男性社会の中で、読後感が恋愛もの以上に生々しい。『シグルイ』も救いのなさが徹底していて、武士道そのものが狂気として描かれているのが凄まじい。

というか駿河城御前試合、「宿命の最終決戦」みたいな空気を出しておいて、『終末のワルキューレ』的に言うとまだひと試合目レベルなの!? って衝撃がデカすぎる。ここまで積み上げた因縁ですら、この狂った世界の一部でしかないのかよ……

漫画とか映画って、基本的に誰か一人に感情移入できないと最後までハマれないタイプなんだけど、『シグルイ』は最後まで怪物たちを眺め続けながら完走した感覚。それでも圧倒的に面白かった。誰にも共感できないのに、誰からも目が離せない。

MAMIYA CULTURE LOGをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む