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『イン・ザ・メガチャーチ』感想

897文字
著者朝井 リョウ
発行元日本経済新聞出版
ページ数448ページ
発行日2025年09月05日

【作品概要】
沈みゆく列島で、“界隈”は沸騰する――。
あるアイドルグループの運営に参画することになった、家族と離れて暮らす男。内向的で繊細な気質ゆえ積み重なる心労を癒やしたい大学生。仲間と楽しく舞台俳優を応援していたが、とある報道で状況が一変する女。ファンダム経済を仕掛ける側、のめり込む側、かつてのめり込んでいた側――世代も立場も異なる3つの視点から、人の心を動かす“物語”の功罪を炙り出す。
「神がいないこの国で人を操るには、“物語”を使うのが一番いいんですよ」

https://info.nikkeibp.co.jp/books/campaign/121045/

推し活をテーマに、3人の視点から描かれる物語。そしてラストが、とにかくエグい。

その時の環境や個人の素質もあるとは思うけど、何かに夢中になって消費している時って、裏を返せばどこか満たされていない状態でもあるよな……と。今の時代を生きる中で、なんとなく抱いていた感覚が、そのまま言語化されているような感覚。

正解のない時代で、視野が広がりすぎても、逆に狭すぎても、どこか幸せから遠のいてしまう。このバランスの難しさに、生きづらさを感じる瞬間は確かにある。推し活に限らず、視野が狭まっている時特有の没入できる楽しさもわかるし、未来に旗が立っていることで、目の前のしんどさを乗り越えられる感覚にも強く共感した。

作中の3人の物語を俯瞰して見ると、正直「ヤバい奴ら」にも見える。でも、その過程にはしっかりと納得できる積み重ねがあって、誰しも同じ道を辿る可能性があると思うと、他人事ではいられない怖さがある。

どこか、破滅に向かう犯罪者の手記を読んでいるような感覚に近い。理解できてしまうからこそ怖い—— そんな読後感だった。